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遺言書がない場合の相続登記で困ったら?手続きの流れと必要書類を徹底解説

遺言書がない場合の相続登記で困ったら?手続きの流れと必要書類を徹底解説

公開日:2026-02-17
最終更新日:2026-02-17

遺言書がない場合の相続登記で困ったら?手続きの流れと必要書類を徹底解説

相続が起きたけれど、遺言書が見つからない。

そんなとき、不動産の名義変更(相続登記)はどのように進めればよいのでしょうか。

2024年4月から、相続登記は法律で義務化されました。

正当な理由なく放置していると、過料(罰金のようなもの)が科される可能性もあります。

「そのうちやろう」と後回しにできる手続きではなくなっています。

遺言書がない場合は、相続人全員で話し合いを行い、「誰がどの財産を引き継ぐのか」を決めてから、相続登記を申請する必要があります。


そのため、遺言書があるケースよりも手続きは少し複雑になります。

この記事では、
・相続登記が必要になるケース
・最初に確認すべきポイント
・相続人同士の話し合いの進め方
・必要書類の集め方
といった流れを、できるだけ分かりやすく解説しています。

また、
・相続人の意見が合わないときの対処法
・司法書士に依頼すると何が楽になるのか

といった実務でよくある疑問についても触れています。

「何から始めればいいか分からない」「期限があると聞いて不安」

そんな方でも、落ち着いて一歩ずつ進められるように全体の流れを整理しました。

相続登記をスムーズに終えるための 参考にしていただければ幸いです。

Contents

遺言書がない場合の相続登記が必要になるケース

亡くなった方が遺言書を残していなかった場合や、遺言書が見つからない場合は、

法律で決められた相続人(法定相続人)が、財産を引き継ぐことになります。

このようなケースでは、不動産の名義変更(相続登記)が必要になりますが、

実は「遺言書がない」といっても、いくつか代表的なパターンがあります。

ここからは、遺言書がない場合に相続登記が必要になる主なケースについて、順番に分かりやすく解説していきます。

被相続人が遺言書を残していなかった場合

相続でまず確認するべきなのは、遺言書があるかどうかです。

遺言書には、「誰に何を渡すか」が書かれており、相続は原則としてその内容に従うことが法律で決められています。

遺言書があれば、その内容どおりに手続きを進めます。

一方、遺言書がない場合は、相続人全員で話し合いをして遺産の分け方を決める必要があります。

そのため最初に行うのが、法定相続人の確定です。

亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をすべて集め、誰が相続人になるのかを確認します。

相続人が確定したら、全員で遺産分割協議を行い、話し合った内容を遺産分割協議書にまとめます。

あわせて、相続人全員の印鑑証明書も準備します。

ここで注意したいのが、「家に遺言書がなかった=遺言書なし」とは限らないという点です。

遺言書には、
・自筆証書遺言(自分で書くタイプ)
・公正証書遺言(公証役場で作るタイプ)
・秘密証書遺言
といった種類があります。

公証役場や法務局に保管されている場合もあるため、可能性のある遺言書をきちんと調べたうえで、

はじめて「遺言書がない」と判断することが大切です。

遺言書の種類

保管場所の例

確認方法

自筆証書遺言

自宅(金庫、タンス、仏壇など)

自宅内を丁寧に捜索する

自筆証書遺言(保管制度利用)

法務局

法務局に遺言書保管事実証明書を請求する

公正証書遺言

公証役場

公証役場に遺言検索を依頼する

秘密証書遺言

自宅または貸金庫など

自宅や貸金庫を確認する

遺言書があっても不動産について記載がない場合

遺言書はあるけれど、不動産について何も書かれていない(一部が漏れている)

このようなケースは、実はそれほど珍しくありません。

遺言書に書かれていない財産がある場合、その部分については、

相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。

つまり、遺言書は存在していても、不動産についての記載がなければ、

その不動産に関しては「遺言書がない場合」と同じ手続きになります。

具体的には、相続人全員で話し合い、「この不動産は誰が取得するのか」を決め、

その内容を遺産分割協議書にまとめます。

そして、不動産を取得した相続人が相続登記を申請します。

では、なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

遺言書に財産が書かれていない理由として、次のようなケースが考えられます。

記載漏れの理由

具体例

遺言書作成後に取得した不動産

遺言書を作成した後に新たに土地や建物を購入した

把握していなかった不動産

先代から相続した山林など、被相続人自身が把握していなかった

意図的に記載しなかった

法定相続分で分けることを想定し、あえて記載しなかった

記載の見落とし

複数の不動産があり、一部の記載を忘れていた

このような事態を防ぐために、遺言書には

「その他一切の財産は〇〇に相続させる」

といった包括的な条項を入れておくことが勧められています。

こうした一文があれば、あとから見つかった財産や、書き漏れていた不動産にも対応できます。

もっとも、後から見つかった財産については、その都度、誰が取得するのかを話し合って決めたいとお考えになるケースもあります。

そのため実際には、このような記載がない遺言書も少なくありません。

遺言書が無効となった場合

遺言書があっても、無効になってしまうケースがあります。

特に自筆証書遺言は要件が厳しいので些細なことで無効となるケースが多いのが実情です。

たとえば、

・自筆証書遺言の一部を他人に書いてもらった
・日付がはっきり書かれていない
・押印がない

といったケースです。

この場合は遺言書がなかったものとして扱われ、相続人全員で遺産分割協議を行い、その後に相続登記をする流れになります。

自筆証書遺には、次のような要件があります。

・本人が自筆で書いていること
・作成した日付が書かれていること
・氏名が記載されていること
・押印があること
・訂正がある場合は、決められた方法で直していること

これらのうち、一つでも欠けていると、遺言書は無効になります。

自筆証書遺言が無効になってしまう主な原因を、次でまとめていきます。

無効となる原因

内容

自筆要件の違反

財産目録以外の部分を他人に書いてもらった、パソコンで作成した

日付の不備

日付の記載がない、「○月吉日」のような特定できない日付になっている

署名の欠如

遺言者本人の署名がない

押印の欠如

押印がされていない

訂正方式の不備

訂正箇所が民法で定められた方式に従っていない

遺言能力の欠如

作成時に認知症などで意思能力がなかった

   

遺言書は、作り方が民法で細かく決められています。

決められた要件を満たしていない場合は、その遺言書を使って相続登記を進めることができません。

ここまで形式が厳しいのは、遺言が問題になるときには、すでに本人が亡くなっており、

「本当はどうしたかったのか」を確認できないからです。

そのため、法律ではルールをとても厳格に定めています。

また、形式が整っていたとしても、遺言書を作成した時点で認知症などにより判断能力がなかった場合は、

「遺言能力がなかった」とされ、遺言書が無効になる可能性もあります。

このようなケースでは、相続人の間で「この遺言は有効なのか」という争いになることもあり、

最終的に裁判所の判断を求めることになる場合もあります。

もし遺言書が無効になった場合は、次のいずれかの方法で相続を進めることになります。

・法律で決められた割合で分ける(法定相続分)
・相続人全員で話し合って分ける(遺産分割協議)
・家庭裁判所に判断してもらう(調停・審判)

どの方法を選ぶにしても、遺言書が有効な場合と比べて、手続きはどうしても複雑になります。

遺言書がない場合の相続登記の全体像

遺言書がない場合の相続登記は、遺言書がある場合と比べて、どうしても手続きが複雑になります。

これは、亡くなった方が遺言書を残していない場合、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、

「誰がどの財産を相続するのか」を話し合いで決めなければならないためです。

ここからは、遺言書がない場合の相続登記について、

・遺言書がある場合との手続きの違い
・相続登記の義務化による影響
・相続登記の期限

といったポイントを中心に、全体の流れを分かりやすく解説していきます。

遺言書がある場合との手続きの違い

遺言書の有無によって、相続登記の手続きは大きく異なります。以下の表で主な違いを確認しましょう。

比較項目

遺言書がある場合

遺言書がない場合

不動産の取得者

遺言書の内容に従って決定

遺産分割協議で決定

遺産分割協議

原則として不要

法定相続人全員の参加が必須

遺産分割協議書の作成

原則として不要

作成が必要(相続人全員の署名押印)

主な必要書類

遺言書、検認済証明書(自筆証書遺言の場合)

遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書

手続きの難易度

比較的容易

相続人間の合意が必要なため複雑

手続きにかかる時間

比較的短期間

協議の進捗状況により長期化する可能性

遺言書がある場合は、その内容に基づいて、誰が不動産を取得するのかがはっきり決まっています。

そのため、原則として相続人同士で改めて話し合うことなく、相続登記を進めることができます。

一方で、遺言書がない場合は、法定相続人全員が参加する遺産分割協議を行い、

全員の合意を得たうえで遺産分割協議書を作成する必要があります。

この点が、遺言書がある場合との大きな違いです。

なお、遺言書がない場合に選択できる相続登記の方法は、主に次の3つがあります。

登記の方法

概要

特徴

遺産分割協議による相続登記

相続人全員で話し合い、不動産を取得する人を決めて登記

最も一般的な方法。特定の相続人名義にできる

法定相続分による相続登記

民法で定められた法定相続分の割合で共有登記

協議不要で単独申請可。ただし共有状態となる

相続人申告登記

相続人であることを法務局に申し出る制度

義務を果たしたとみなされる暫定措置

相続人申告登記とは、「私が相続人の一人です」と法務局に申し出ることで、

ひとまず相続登記の義務を果たした扱いになる簡易的な手続きです。

ただし、これはあくまで一時的な対応(暫定措置)です。

その後、相続人同士の話し合いがまとまり、遺産分割が成立した場合は、

成立した日から3年以内に正式な相続登記をあらためて申請する必要があります。

相続登記の義務化による影響

亡くなった方の名義のまま、相続登記がされない土地が増えています。

その結果、登記簿を見ても「今の所有者が誰なのか分からない」という土地が全国で増加しました。

いわゆる「所有者不明土地」の問題です。

所有者が分からないことで、

・土地の管理が行き届かない
・売買が進まない
・公共事業が進められない

といった社会的な問題が起きています。

こうした状況を改善するため、令和3年に法律が改正され、これまで任意だった相続登記が義務化されました。

義務化は、令和6年4月1日から始まっています。

相続(遺言による取得も含みます)で不動産を取得した相続人は、

その事実を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。

また、遺産分割協議によって不動産を取得した場合は、

協議が成立した日から3年以内に登記を行う必要があります。

正当な理由なくこの義務に違反した場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。

この義務化により、遺言書がない場合の相続でも、早めに手続きを進める必要性が

これまで以上に高まっています。

このあと、「具体的にどんな影響があるのか」を整理していきます。

影響の内容

詳細

期限の設定

相続を知った日から3年以内に登記が必要

過料の適用

正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料

過去の相続への適用

令和6年4月1日以前の相続も義務化の対象

救済制度の創設

相続人申告登記で暫定的に義務を果たすことが可能

相続人同士の話し合いがまとまらない場合や、相続人の人数がとても多く、戸籍集めなどに時間がかかって

期限内の相続登記が難しいこともあります。

そのようなときのために、令和6年4月から「相続人申告登記制度」が始まりました。

これは、「私は相続人の一人です」と法務局に申し出ることで、ひとまず相続登記の義務を果たした扱いになる制度です。

あくまで一時的な対応ですが、期限に間に合わない場合の“救済措置”として使うことができます。

なお、正当な理由として認められる可能性があるのは、たとえば次のような場合です。

・相続人が非常に多く、戸籍収集や把握に時間がかかる
・遺言の有効性や、遺産の範囲について争いがある
・相続人本人が重い病気などで手続きできない
・経済的に困っていて、登記費用をすぐに用意できない

一方で、「忙しいから」「手続きが面倒だから」

といった理由だけでは、正当な理由とは認められにくいと考えられています。

期限が迫っている場合は、何もしないまま放置するのではなく、早めに専門家へ相談することが大切です。

遺言書がない場合の相続登記の期限

遺言書がないケースでは、遺産分割協議が必要になるため、期限を過ぎてしまうリスクが高いのが実情ですので、注意が必要です。

相続発生時期

期限

備考

令和6年4月1日以降

相続による不動産取得を知った日から3年以内

遺産分割成立後はその日から3年以内に追加の義務

令和6年4月1日より前

令和9年3月31日まで

3年の猶予期間が設けられている

不動産を「自分が相続した」と知った日から3年以内に相続登記をする必要があります。

これは令和6年4月から義務になりました。

昔の相続も対象です。

令和6年4月1日より前に相続が発生していて、まだ名義変更をしていない不動産がある場合は、

令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります。

かなり前の相続でも放置はできません。

また、「この家は誰が相続するのか」すぐに決まらないケースはとても多いです。

その場合、相続人全員で話し合いをします。

これを遺産分割協議といいます。

たとえば、「この不動産は長男が取得する」と決まった場合。

その遺産分割協議が成立した日から3年以内に、名義変更(相続登記)を行う必要があります。

遺言書がない場合は「2つの期限」に注意が必要です。

遺言書がない相続では、この遺産分割協議がまとまらなかった場合、次のように2段階の期限が発生することがあります。

① まず、相続を知った日から3年以内に

・法定相続分での登記
または
・相続人申告登記

を行う。

② その後、遺産分割協議がまとまったら、

成立日から3年以内に正式な相続登記をする。

少しややこしいですが、これが現在のルールです。

正当な理由がないまま、3年以内に相続登記をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。

これは遺言による遺贈の場合でも同じです。

そのため、早めの準備がとても大切です。

期限内に終わらせるためには、

・戸籍を集める
・相続人を確定する
・遺産分割協議を進める

といった準備が必要です。

相続人が多い場合や、意見が分かれている場合は、想像以上に時間がかかります。

できるだけ早めに動き、余裕をもったスケジュールで進めましょう。

遺言書がない場合の相続登記における事前調査

相続登記を行う前には、必ず事前調査を実施する必要があります。

特に遺言書がない場合は、相続人全員での遺産分割協議が必須となるため、

調査を怠ると、手続きが大幅に遅れたり、やり直しが発生したりするリスクがあります。

その結果、時間も手間も余計にかかってしまうことがあります。

そこでここでは、相続登記を円滑に進めるために必要な事前調査のポイントについて、わかりやすく解説します。

遺言書の有無を徹底的に調べる

相続手続きを開始する前に、まず被相続人が遺言書を残していないかどうかを徹底的に調査することが重要です。

遺言書がある場合、故人の意思により、法定相続分とは異なる配分で財産を配分したり、

相続人ではない人に財産を分けたりすることができます。

遺言書の存在を知らされていなかったとしても、遺言書が残されている可能性はあります。

遺言書が後から発見されると、すでに完了した遺産分割協議や相続登記をやり直す必要が生じる場合もあります。

そのため、手続きを進める前に、慎重に確認しましょう。

公証役場での遺言検索

公正証書遺言については、日本公証人連合会がデータベースで管理しています。

そのため、「遺言検索システム」で有無を調べることができます。

遺言検索システムの利用請求は、公証役場で行います。

遺言を作成した公証役場でなくても問題ありません。

お近くの公証役場で請求することができます。

昭和64年1月1日以降に公証役場で作成された公正証書遺言は、

すべてこの検索システムで確認することが可能です。

全国どこの公証役場でも検索できます。

ただし、公証役場は事前予約制をとっていることが多くあります。

必ず事前に電話などで連絡をしてから訪問するようにしましょう。

なお、遺言検索システムを利用するために必要な書類は、次のとおりです。

 

必要書類

説明

遺言者の死亡を証明する書類

遺言者が死亡した事実を証明する書類(除籍謄本等)

相続人であることを証明する書類

遺言者の相続人であることを証明する戸籍謄本

本人確認書類

マイナンバーカード、運転免許証等の顔写真付き公的身分証明書又は

実印及び印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの)

この検索システムで分かるのは、

① 遺言書があるかどうか
② どこの公証役場に保管されているか

この2点だけです。

つまり、遺言書の内容までは分かりません。

保管されている公証役場が判明したら、その公証役場まで直接出向くか、または郵送で、公正証書遺言の謄本を請求しましょう。

法務局での自筆証書遺言の調査

令和2年7月10日より、法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度が始まりました。

この自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は、法務局で遺言書の有無を確認することができます。

故人が「確実に法務局に預けている」と分かっている場合は、遺言書情報証明書の交付請求を行います。

この証明書を取得すると、遺言書の写しが記載されているため、遺言の内容まで確認できます。

一方で、「法務局に預けているか分からない」場合は、まず遺言書保管事実証明書の交付請求をしてください。

この証明書では遺言の内容までは分かりませんが、遺言書が法務局に保管されているかどうかを確認することができます。

自宅やその他の場所での捜索

法務局で保管されていない自筆証書遺言については、残念ながら公正証書遺言のような検索システムはありません。

そのため、故人の自宅や部屋の遺品から実際に探していく必要があります。

遺言書が見つかりやすい場所としては、

・自宅のタンスや引き出し
・金庫
・仏壇
・本棚

などが挙げられます。

また、

・貸金庫に預けられている
・信託銀行との取引があり、銀行で保管されている

といったケースもあります。

さらに、知人や付き合いのある専門家に預けていることもあるため、

被相続人と親しかった人にも確認してみましょう。

なお、貸金庫に保管されている場合は、貸金庫を開けるために銀行での相続手続きが必要になります。

そのため、どうしても時間がかかってしまいます。

ですので、遺言書は貸金庫には保管しないことをおすすめします。

被相続人の戸籍を収集して法定相続人を特定する

遺言書がない場合の相続登記では、法定相続人全員が参加する遺産分割協議が必要となります。

そのため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を収集し、すべての法定相続人を正確に特定することが極めて重要です。

戸籍収集の目的

戸籍謄本の収集には、大きく2つの目的があります。

1つ目は、被相続人の相続人が誰であるかを法的に証明することです。

2つ目は、思いもよらない相続人がいないかを確認することです。

たとえば、

・認知された子
・前婚の配偶者との間の子

などが後から判明するケースもあります。

これらが漏れていると、遺産分割協議そのものが無効になり、

せっかく進めた相続登記も最初からやり直しになってしまいます。

実務でも、戸籍を取得してはじめて相続人の存在が分かった、というケースは少なくありません。

収集すべき戸籍の範囲

被相続人については、出生から死亡までの連続した戸籍をすべて取得する必要があります。

人の一生の中では、

・出生
・婚姻
・転籍
・改製

などによって、戸籍が複数作られるのが一般的です。

そのため、すべての戸籍を漏れなく集めるには、最新の戸籍から順番に、過去へさかのぼって取得していきます。

戸籍収集の具体的な方法

戸籍謄本は、その本籍地の市区町村役場で取得します。

取得方法は、窓口での申請のほか、郵送による請求も可能です。

郵送請求の場合は、

・申請書
・本人確認書類のコピー
・定額小為替
・返信用封筒

を同封して送付します。

戸籍は、何通必要になるか事前に分からないことが多いため、

定額小為替は多めに同封しておくと後から追加請求する手間が省けます。

なお、令和6年3月1日からは広域交付制度が始まり、最寄りの市区町村の窓口で、

本籍地が異なる戸籍もまとめて取得できるようになりました。

当事務所では、被相続人の出生から死亡までの戸籍類を、広域交付制度を利用してご自身で上手に用意される方が多くいらっしゃいます。

そのため、できるだけ専門家の費用を節約したい方には、この制度はとてもおすすめです。

相続人を特定する際の注意点

戸籍を確認する際は、次の点に特に注意が必要です。

・被相続人に認知した子がいないか

・被相続人に養子縁組をした子がいないか

・前婚の配偶者との間に子がいないか

・本来相続人になるはずの人がすでに亡くなっていて、代襲相続が発生していないか

これらの事実が判明した場合は、該当する方も相続人となり、遺産分割協議に参加する必要があります。

相続財産と負債を把握する

相続登記の対象となる不動産だけでなく、被相続人のすべての財産と負債を把握することが重要です。

不動産や銀行預金、動産、有価証券などは、遺産分割が終わるまでは法定相続人全員の共有物となります。

そのため、法定相続人の誰か一人が、これらの遺産を勝手に処分することはできません。

相続財産の全体像をきちんと把握しておくことで、遺産分割協議をスムーズに進めることができます。

プラスの財産の調査

プラスの財産には、

・不動産
・預貯金
・有価証券
・生命保険金
・自動車
・貴金属
・骨董品

などがあります。

これらを漏れなく把握することが、スムーズな相続手続きにつながります。

財産の種類

調査方法

不動産

固定資産税納税通知書、名寄帳、権利証などを確認

預貯金

通帳、キャッシュカード、金融機関からの郵便物を確認し、各金融機関に残高証明書を請求

「相続時口座照会(相続時預貯金口座照会)」を利用※マイナンバーカードと紐づいている口座に限る

有価証券

証券会社からの取引報告書や郵便物を確認し、各証券会社に残高証明書を請求

「ほふり」株式会社 証券保管振替機構への照会

生命保険

保険証券や保険会社からの郵便物を確認

生命保険契約照会制度の利用

自動車

車検証を確認

マイナスの財産(負債)の調査

相続では、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金・ローン・未払いの税金など)も引き継ぐことになります。

負債が財産を上回る場合は、相続放棄を検討する必要があるため、

負債の調査は特に重要です。

負債の主な調査方法は、次のとおりです。

・被相続人宛の郵便物
(請求書・督促状など)の確認

・通帳の引き落とし履歴の確認

・信用情報機関への照会
(CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センター)

・住宅ローンがある場合は、
金融機関への確認

なお、相続放棄の期限は、相続の開始があったことを知った時から3か月以内と決められています。

そのため、負債の調査はできるだけ早く行う必要があります。

不動産の詳細を確認する

相続登記を行うためには、対象となる不動産の詳細な情報を正確に把握する必要があります。

登記申請書には、不動産の所在・地番・家屋番号などを正確に記載しなければなりません。

そのため、事前に十分な調査を行い、間違いのないように進めましょう。

課税明細書での確認

固定資産税の課税明細書は、毎年送られてくる「固定資産税納税通知書」に同封されています。

相続登記では、この課税明細書を使って、被相続人名義の不動産の詳細や固定資産評価額を確認できるため、

もっとも確認しやすい資料です。

ただし、課税明細書には、私道部分など一部の不動産が記載されていないケースもあります。

そのため、課税明細書だけに頼ると、不動産の漏れが生じる危険性がある点に注意しましょう。

固定資産評価証明書の取得

相続登記の際には、登録免許税を納付する必要があります。

その計算の基礎となるのが、固定資産評価額です。

固定資産評価証明書は、不動産の所在地の市区町村役場で取得できます。

※東京23区の場合は、都税事務所での取得となります。

取得の際には、被相続人と請求者の関係を証明する戸籍謄本などの提示を求められることがあります。

また、固定資産評価額は毎年4月1日に更新されます。

そのため、登記申請のタイミングによっては、最新の評価証明書を取り直す必要があることもありますので注意してください。

登記済権利証(登記識別情報)での確認

不動産の確認方法として、権利証(登記識別情報)を見る方法もあります。

権利証には、不動産の所在や地番などが記載されているため、被相続人名義の不動産を把握する手がかりになります。

ただし、

・一部が紛失している
・すべての不動産分がそろっていない

といったケースも多く、これだけで完全に確認できないこともあります。

そのため、課税明細書とあわせて確認し、漏れがないかチェックすることが大切です。

名寄帳(なよせちょう)での確認

名寄帳とは、被相続人名義の不動産を一覧で確認できる書類です。

市区町村役場で取得できます。

名寄帳を見ることで、

・どんな不動産を持っていたか
・どの場所にあるか

をまとめて確認することができます。

課税明細書や権利証だけでは、私道や評価のつかない土地などが載っていないこともあります。

そのため、名寄帳をあわせて確認すると、不動産の漏れを防ぎやすくなります。

課税明細書、権利証、名寄帳

この3つを組み合わせて調べると、かなり安心です。

ただし、名寄帳も、地域によっては共有名義の場合に最初の1名分しか表示されないことがあります。

そのため、名寄帳だけでは万全とはいえません。

このような事情もあるため、不動産については

権利証(登記識別情報)をすべて保管し、ご自身で管理しておくことが大切です。

きちんと整理しておかないと、将来、相続する人が
とても苦労することになります。

登記事項証明書の取得

法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、不動産の現在の登記内容を確認します。

登記事項証明書には、

・不動産の所在
・地番(または家屋番号)
・地目(または種類・構造)
・地積(または床面積)

が記載されています。

さらに、

・所有者
・抵当権などの権利関係

も確認することができます。

不動産調査の最終チェックとして、とても重要な書類です。

ただし、司法書士に相続登記を依頼する場合は、不要です。

不動産調査における注意点

不動産の調査では、以下の点に特に注意が必要です。

確認事項

注意点

私道や共有部分

自宅前の私道や、マンションの敷地権など、見落としやすい不動産がないか確認

未登記建物

建物が未登記の場合は、表題登記から行う必要がある

登記名義人の住所

被相続人の最後の住所と登記上の住所が異なる場合は、住所のつながりを証明する書類が必要

抵当権の有無

住宅ローン完済後に抵当権抹消登記がされていない場合がある

明治時代の古い抵当権が発見される場合もある

他の共有者の存在

共有不動産の場合、被相続人の持分のみが相続対象となる

遺言書がない場合の遺産分割協議の進め方

遺言書がない場合や、遺言書に記載された内容に問題がある場合には、

民法で定められた相続人である「法定相続人」全員が集まり、どのように遺産を分けるかを話し合いで決めることになります。

相続登記を完了させるためには、この遺産分割協議を適切に進め、遺産分割協議書を作成することが不可欠です。

ここでは、遺産分割協議の基本から、具体的な進め方、協議書作成時の注意点まで、わかりやすく解説します。

遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、共同相続人全員の話し合いによって、相続財産の分け方を決める手続きです。

遺産が共有状態になっているため、誰が何を相続するかを話し合いで決めます。

遺産分割協議は、調停や審判のように家庭裁判所を使うものではなく、

あくまで当事者同士の話し合いで取り決めを行います。

相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で、遺産を分けることも可能です。

遺産分割協議書を作成すれば、法定相続分と違う割合でも、正式に相続財産を引き継げます。

遺産分割協議のやり方に特別な決まりはありません。

相続人の誰かの家に集まって話し合ってもよいですし、

離れて暮らしている場合は、電話やメールなどで進めることもできます。

項目

内容

定義

相続人全員で遺産の分け方を話し合い、合意する手続き

参加者

法定相続人全員(相続放棄した人は除く)

協議の方法

対面、電話、メール、手紙など

成立要件

相続人全員の合意

協議結果

遺産分割協議書として書面化

法定相続人全員の参加が必須

遺産分割協議は、相続人全員が参加しなければ無効となってしまいます。

そのため、まずは当事者となる相続人を正確に確認することが必要です。

具体的には、被相続人の戸籍を調査するなどして、相続人の範囲を確認していきます。

遺産分割協議が成立するためには、相続人全員の合意が必要です。

基本的には、相続人全員が集まって話し合いますが、病気や遠方で参加できない場合は、手紙やメールで協議することも可能です。

なお、相続放棄をした人は、協議に参加しなくて大丈夫です。

相続人を確定するには、戸籍謄本などの取得が必須です。

思い込みで進めてしまい、あとから前婚の子や認知した子が判明すると、遺産分割協議は無効になってしまうため、注意しましょう。

また、話し合いの途中で相続人同士の意見が対立してしまった場合、多数決で決めることはできません。

どうしても話し合いで決まらないときは、遺産分割調停や審判など、裁判手続きの中で遺産の配分を決めることもあります。

遺産分割協議書の書き方と注意点

遺産分割について相続人全員が合意した内容は、遺産分割協議書にまとめて記録として残す必要があります。

遺産分割協議書を作る目的は、相続人全員が合意したことを書面で証明するためです。

あとになって相続人同士のトラブルに発展しないよう、きちんと書面に残しておくことが大切です。

こうしておくことで、後々の誤解や争いを防ぎやすくなります。

遺産分割協議書に記載すべき事項

遺産分割協議書には決まったフォーマットはありませんが、「誰が」「どの財産を」「どれだけ」受け取るのかを、

銀行や法務局などの第三者が見ても、はっきり分かるように書く必要があります。

特に不動産については登記簿謄本の記載に従って正確に記載することが重要です。

記載項目

記載内容の例

被相続人の情報

氏名、生年月日、死亡日、最後の本籍地、最後の住所

相続人全員の情報

氏名、住所、被相続人との続柄

不動産の表示

所在、地番、地目、地積(土地)/所在、家屋番号、種類、構造、床面積(建物)

預貯金の表示

金融機関名、支店名、口座種別、口座番号

協議成立日

相続人全員が合意した日付

署名押印のルール

遺産分割協議書には、協議が成立した日付を記載し、相続人全員が署名と押印をします。

実務上は、相続人の押印には実印を用い、印鑑証明書を添付します。

これは、金融機関の相続手続きや不動産の相続登記の際に、

相続人全員の実印が押された協議書と印鑑証明書の提示を求められることがあるためです。

「記名」ではなく署名、「認め印」ではなく実印で作成しましょう。

遺産分割協議書作成時の注意点

遺産分割協議書を作成したあとに、相続人ひとりの判断だけで内容を変更することはできません。

変更するには、相続人全員の合意が必要になります。

そのため、連絡のやり取りや書類の作り直しなど、時間も手間もかかってしまいます。

このため、協議書の内容は、慎重に検討したうえで合意することが大切です。

なお、ひとつの遺産分割協議書ですべての財産の分割を完結させる必要はありません。

一部の財産だけ先に分割を確定させ、残りの財産については後日あらためて協議する、という方法も可能です。

このような場合は、分割が確定するたびに、複数の遺産分割協議書を作成することもできます。

相続人の数が多い場合や、それぞれが遠方に住んでいる場合には、遺産分割協議書ではなく

遺産分割協議証明書を使う方法もあります。

これは、相続人それぞれが証明書を作成し、そのすべてをそろえることで、

遺産分割の協議が成立したことになります。

注意点 詳細
不動産の記載 登記簿謄本の記載どおりに正確に記載する
署名・押印 相続人全員が自署し、実印で押印する
印鑑証明書 相続人全員の印鑑証明書を添付する
変更の可否 単独での変更は不可、全員の合意が必要
新たな財産発覚時 追加の遺産分割協議書を作成する
   

遺言書がない場合の相続登記に必要な書類と取得方法

遺言書がない場合の相続登記では、遺産分割協議によって、不動産を取得する相続人を決めることになります。

遺言書がなく、複数の相続人のあいだで法定相続分とは違う分け方をする場合は、

相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。

そのため、遺言書がある場合と比べて、準備しなければならない書類が多くなる傾向があります。

相続登記に必要な書類は、大きく分けて次の4つに分類されます。

・被相続人に関する書類
・相続人に関する書類
・不動産に関する書類
・遺産分割協議書

これらをそろえたうえで、相続登記の手続きを進めていきます。

以下では、それぞれの書類について詳しく解説していきます。

被相続人関連の書類

被相続人(亡くなった方)に関する書類は、相続が発生したことと、法定相続人が誰かを証明するために不可欠です。

相続登記の申請では、まず被相続人が亡くなったことを証明するために、死亡の記載がある戸籍謄本や除籍謄本を提出します。

さらに、被相続人と登記名義人が同一人物であることを確認するため、

本籍の記載がある住民票の除票または戸籍の附票の提出が必要になります。

出生から死亡までの連続した戸籍謄本

亡くなった方の戸籍は、出生のときに作成されたものから、亡くなるまでのすべてが必要になります。

最終の除籍謄本に出生や死亡の記載があれば足りる、というわけではありません。

生まれたときの戸籍(親や祖父母が筆頭者のもの)から始まり、

・筆頭者が変わって作成された戸籍
・法律改正で新たに作られた戸籍
・結婚で作られた戸籍
・転籍で作られた戸籍

など、亡くなるまでの履歴すべてを集める必要があります。

「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」には、

・両親
・兄弟姉妹
・結婚や離婚の履歴
・転籍
・養子縁組
・子どもの有無

といった情報が記載されています。

これらの連続した戸籍を確認することで、相続が発生した事実と、誰が法定相続人なのかを証明できます。

戸籍は一生のあいだに複数作られます。

結婚や離婚、転籍、養子縁組などがあるたびに、新しい戸籍が作成されます。

そのため、連続した戸籍を追っていくことで、相続人を正確に確認できるのです。

婚姻などで本籍地が変わっている場合でも、現在は「広域交付制度」により、

最寄りの市区町村役場でまとめて取得できるようになりました。

住民票の除票

 

相続登記では、不動産の登記簿上の名義人と、被相続人が同一人物であることを証明するため、住民票の除票が必要になります。

住民票の除票とは、転出や死亡によって住民基本台帳から除かれた記録で、氏名・住所・本籍等が記載されています。

これにより、亡くなったときの住所を確認することができます。

取得は、被相続人の最後の住所地の役所で行います。

また、登記簿の住所と死亡時の住所が異なる場合には、住所の履歴を確認するため、戸籍の附票の提出も必要になります。

住民票の除票は、死亡などで除かれた住民票のことで、過去にその住所に住んでいたことの証明になります。

なお、住民票の除票の代わりに、戸籍の附票(新しく戸籍を作ってからの住所履歴が記載された書類)でも

相続登記の手続きは可能です。

住民票の除票の保存期間は150年とされていますが、古い除票はすでに廃棄されている場合もあります。

その場合は、戸籍の附票で代用するか、登記済権利証を提供する、または

「固定資産税の納税証明+不在籍証明書+不在住証明書」組み合わせて提出する等の措置が必要になります。

相続人関連の書類

遺産分割協議は、相続人全員で行わなければなりません。

そのためにはまず、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や、改製原戸籍謄本、除籍謄本などを取得し、

誰が相続人になるのかを確認する必要があります。

また、遺産分割協議によって相続登記を行う場合は、被相続人が亡くなった時点で、

協議の当事者となる相続人が全員生存していることを証明しなければなりません。

そのため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等に加えて、相続人全員の戸籍謄本の提出も必要になります。

相続人全員の現在の戸籍謄本

相続登記では、誰が相続人なのか、そして被相続人が亡くなった時点で相続人が生存しているかを確認するため、

相続人全員の戸籍謄本が必要になります。

被相続人の配偶者や未婚の子については、現在の戸籍謄本が、被相続人死亡時の戸籍と同一になる場合があります。

この場合は、改めて取り寄せる必要はありません。

戸籍謄本は、原則として各相続人の本籍地の市区町村役場で取得します。

ただし、本人・配偶者・直系親族の戸籍であれば、最寄りの役所で「広域交付制度」を使って取得が可能です。

相続人の戸籍謄本は、その相続人が現在も生存していることを確認するために必要です。

そのため、相続人の戸籍謄本の取得日は、被相続人の死亡日以降である必要があります。

ただし、すでに被相続人の戸籍に記載されている相続人については、改めて戸籍を取得する必要はありません。

相続人全員の印鑑証明書

遺産分割協議による相続登記を行う場合は、申請の際に

・遺産分割協議書
・相続人全員の印鑑証明書

の提出が必要になります。

印鑑証明書は、遺産分割協議書に押した実印が本人のものであることを証明するための書類です。

住所地の市区町村役場で取得できますが、あらかじめ印鑑登録を済ませておく必要があります。

まだ印鑑登録をしていない相続人がいる場合は、先に印鑑登録の手続きを行い、その後に印鑑証明書を取得します。

マイナンバーカードをお持ちであれば、コンビニのマルチコピー機でも取得可能です。

なお、印鑑証明書には法律上の有効期限はありません。

ただし、金融機関などの手続きでは、発行から6か月以内のものを求められることが多くあります。

相続手続きをまとめて進める場合は、できるだけ取得時期をそろえると効率的です。

不動産取得者の住民票

相続登記では、不動産を相続する人の住所を証明するために、住民票が必要になります。

登記簿には名義人の住所が記載されるため、正しい住所を示す書類として住民票を提出します。

必要になるのは、実際に不動産を相続する人の分だけです。

相続しない人の住民票は、提出する必要はありません。

住民票は、不動産を取得する人が住民登録をしている市区町村役場で取得できます。

なお、マイナンバーが記載された住民票は使えませんので、記載のないものを準備しましょう。

不動産関連の書類

相続登記の申請には、対象となる不動産の情報を正確に把握し、登録免許税を算出するための書類が必要になります。

これらの書類は、法務局や市区町村役場で取得することができます。

登記事項証明書

登記事項証明書とは、土地の面積や所在地、所有者などを証明する書類です。

以前は「登記簿謄本」と呼ばれていましたが、内容はほとんど変わりません。

相続登記では、登記事項証明書の提出自体は必要ありません。

ただし、不動産の所在地は、通常の住所とは異なることが多いため、

申請書に正確な所在を記載するために、取得しておくことが望ましいといえます。

相続登記では、登記申請書に不動産の情報を正確に記載することが不可欠です。

登記事項証明書には、

・所在地
・地番
・面積
・所有者
・担保の有無

などの詳細な情報が記載されています。

古い証明書を持っていても、現在の登記内容と異なる場合があります。

そのため、必最新のものを取り寄せるようにしましょう

※司法書士に依頼する場合は、インターネット上で不動産情報を取得できるため、基本的にご用意いただく必要はありません。

固定資産評価証明書

相続登記では、不動産の固定資産評価証明書を提出する必要があります。

この証明書は、相続登記を申請する年度のものでなければなりません。

固定資産評価証明書は、登記の際に納める税金である登録免許税を計算するために必要な書類です。

証明書には、登録免許税の算出に使う不動産の価額が記載されています。

固定資産評価証明書は、不動産の所在地を管轄する市区町村役場などで取得できます。

相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)を持参すれば、被相続人名義の不動産についても取得可能です。

なお、固定資産税の納税通知書に同封されている「課税明細書」を代わりに使える場合もあります。

ただし、課税明細書には、私道部分など非課税の土地が記載されていない場合があります。

そのため、不動産の記載漏れがないか、注意が必要です。

遺産分割協議書

遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合い、決定することをいいます。

協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・捺印を行います。

遺産分割協議書には、決まった書式はありません。

ただし、相続登記に使用するためには、一定の要件を満たす必要があります。

記載事項 内容
被相続人の情報 氏名、死亡日、最後の住所、最後の本籍
不動産の表示 登記事項証明書どおりの所在・地番・地目・地積(土地)、所在・家屋番号・種類・構造・床面積(建物)
取得する相続人 不動産を取得する相続人の氏名を明記
相続人全員の署名押印 実印による押印が必要
作成日 遺産分割協議が成立した日付

遺産分割協議書に記載する不動産の情報は、登記事項証明書の内容と完全に一致させる必要があります。

住所と地番は異なることが多いため、必ず登記事項証明書を確認してから記載しましょう。

相続人がそれぞれ別の場所に住んでいる場合は、各相続人が別々の用紙に署名・押印する

「遺産分割協議証明書」を作成する方法もあります。

この方法であれば、同じ書類を順番に郵送する手間を省くことができます。

なお、印鑑証明書だけは代理で取得できないため、各相続人ご自身で用意していただく必要があります。

それ以外の書類については、司法書士に依頼する場合、取得を代行してもらえることが多いです。

遺言書がない場合の相続登記でありがちな問題と解決策

遺言書がない場合の相続登記では、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があるため、さまざまな問題が起こる可能性があります。

ここでは、実務上よく起こりがちな問題と、その具体的な解決策について解説します。

相続人間で話し合いがまとまらない

遺産分割協議では、相続人全員の合意が成立しないケースもあります。

相続人それぞれに事情や考え方があり、相続人の数が多い場合や、関係があまり良くない場合には、特に話し合いが難航しがちです。

話し合いがまとまらない主な原因

遺産分割協議に応じない理由としては、他の相続人との確執があるケースが最も多く見られます。

また、遺産をできるだけ多く自分のものにしたいと考え、意図的に協議を妨げる人がいる場合もあります。

話し合いがまとまらない原因 具体例
相続人間の感情的な対立 過去からの不仲、兄弟姉妹間の確執
遺産分割の内容への不満 法定相続分に納得しない、自分だけ多くもらいたい
不動産の分割方法の対立 誰が取得するか、売却するか否かで意見が分かれる
特別受益・寄与分の主張 生前贈与を受けた人への不満、介護の貢献度の評価
財産の使い込みの疑い 被相続人の預貯金が不明に減少している
遺産分割調停の活用

相続人全員で話し合い遺産の分け方を決める遺産分割協議がスムーズに進むのが理想です。

しかし実際には、分け方で折り合いがつかなかったり、一部の相続人が感情的になって、

話し合い自体ができなくなることも少なくありません。

このような場合は、管轄の家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることで、調停または審判によって

遺産分割を進めることができます。

遺産分割調停は、家事審判官(裁判官)と調停委員で構成される調停委員会が、申立人と相手方それぞれの言い分を聞きながら、

裁判所を介した話し合いで遺産分割の成立を目指す手続きです。

遺産分割審判への移行

遺産分割調停が成立しなかった場合や、相続人同士の意見がどうしても一致しない場合は、

家庭裁判所に「遺産分割審判」を申し立てることになります。

遺産分割審判では、調停とは異なり、裁判所が最終的な遺産分割の内容を決定します。

解決手段 特徴 メリット
遺産分割協議 相続人全員による話し合い 柔軟な取り決めが可能
遺産分割調停 家庭裁判所での調停委員を交えた話し合い 第三者が仲介し冷静な協議ができる
遺産分割審判 裁判官による決定 最終的な法的決着がつく

相続人の中に連絡が取れない人がいる

遺産分割協議は、相続人が一人でも欠けていると無効になります。

「応じてくれないから」という理由では、協議を進めることはできません。

そのため、連絡の取れない相続人がいる場合でも、必ずその人を含めて協議を行う必要があります。

連絡が取れない原因と対処法

疎遠な相続人に連絡をすると、「無視」されたり「拒絶」されたりすることがあります。

相続人が連絡を無視したり、連絡を拒否する場合には、一般的に次のような理由が考えられます。

・入院などの事情で、そもそも書類を見ていない
・高齢のため、相続の難しい内容が理解できず放置している
・こちらが提案した遺産分割の内容に納得していない
・付き合いがなく、面倒なことに関わりたくない
・振り込め詐欺などと勘違いされ、警戒して無視されている

住所の調査方法

相続人がどこに住んでいるかわからない場合は、役所でその人の戸籍の附票を取得することで、

住所を調べることができます。

戸籍の附票には、その本籍地に記載されて以降の住所の履歴が記録されています。

そのため、現在の住民票上の住所は確認することが可能です。

連絡を取る際のポイント

疎遠な相続人に連絡をする場合は、最初は文書で連絡することをおすすめします。

いきなり遺産分割協議書を送り、押印を求めるだけでは、受け取った相手も戸惑ってしまいます。

まずは、

・被相続人が亡くなった経緯や事実
・遺産の内容や金額
・各相続人の法定相続分

などについて、包み隠さず丁寧に説明することが大切です。

手紙で事情をきちんと伝えることで、誤解や不信感を防ぐことにつながります。

そのうえで、可能であれば電話で連絡が取れるようにできると、よりスムーズです。

不在者財産管理人の選任

どうしても相続人の所在が分からない場合や、行方不明となっている場合は、家庭裁判所に

「不在者財産管理人」の選任を申し立てることができます。

不在者財産管理人が選任されると、その管理人が、行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加します。

ただし、不在者財産管理人が遺産分割協議を行うには、家庭裁判所の許可(権限外行為の許可)が必要になります。

相続人に判断能力がない人がいる

相続人の中に、認知症などで判断能力が低下している方がいる場合、その方は有効な遺産分割協議を行うことができません。

判断能力がない状態で行われた遺産分割協議は、無効になる可能性があります。

成年後見制度の利用

相続人の中に判断能力がない方がいる場合は、家庭裁判所に成年後見人等の選任を申し立てる必要があります。

成年後見人等が選任されると、その後見人等が本人に代わって遺産分割協議に参加します。

遺言書がない場合の相続登記を司法書士に依頼する

遺言書がない場合の相続登記は、遺産分割協議書の作成や戸籍の収集など、多くの手続きが必要になります。

これらの手続きを自分で行うことも可能ですが、専門的な知識が求められます。

そのため、司法書士に依頼することで、より確実かつスムーズに手続きを進めることができます。

ここでは、司法書士に依頼する場合の費用や、依頼するメリット・デメリット、

さらに弁護士への相談が必要となるケースについて解説します。

司法書士に依頼する場合の費用

相続登記に関する司法書士の費用は、自由に決めることができますので、事務所によって異なります。

たとえば、

・相続登記一式で〇万円
とまとめている事務所もあれば、

・遺産分割協議書の作成〇万円
・戸籍収集代〇万円

というように、項目ごとに細かく分けている事務所もあります。

司法書士費用が加算されるケースとしては、次のような要素があります。

加算要因 内容
不動産の数 不動産の数が一定数以上の場合、数に応じて加算されます。
不動産の価格 不動産の価格が高額な場合、価格に応じて加算されます。
相続関係の複雑さ 兄弟姉妹間の相続、代襲相続、養子縁組などにより相続関係が複雑になっている場合に加算されることがあります。
管轄法務局 不動産の所在地を管轄する法務局が複数に及ぶ場合に加算されることがあります。
戸籍収集 司法書士に戸籍の収集を依頼すると、戸籍の収集にかかる報酬を加算されることがあります。
遺産分割協議書作成 司法書士に遺産分割協議書の作成を依頼すると、その作成報酬を請求されることがあります。
数次相続 不動産の名義が祖父母以上の代のままになっている場合は「数次相続登記」が必要になり、個別の判断と複雑な手続を要するため、司法書士報酬が高額化する可能性があります。

司法書士報酬のほかにも、登録免許税や書類取得の実費がかかります。

登録免許税は、たとえば土地や建物の固定資産評価額の合計が2,000万円の場合、

8万円(固定資産評価額の0.4%)となります。

登録免許税は税金ですので、自分で相続登記を行った場合でも、当然にかかる費用です。

司法書士に依頼するメリットとデメリット

司法書士に依頼するメリット

相続登記は、専門的な知識や複雑な手続きが必要になるため、司法書士に依頼するのが一般的です。

依頼することで、次のようなメリットがあります。

司法書士に相続登記を依頼すると、相続する不動産の情報を正確に把握することができます。

不動産を把握できていないと、登記に漏れが生じ、余計な手間や罰則につながる可能性もあります。

ご自身作られた遺産分割協議書など確認いたしますと、不動産情報の漏れがある場合が多いのが実情です。

相続登記では、戸籍謄本や住民票など、多くの書類を準備する必要があります。

「広域交付制度」により、戸籍をご自身で集めることは以前よりも容易になりました。

しかし、古い戸籍を読み解き、必要な書類がすべてそろっているかを確認することは決して簡単ではありません。

普段お仕事などでお忙しい方にとっては、特に助かるポイントです。

また、司法書士が相続人調査を行うことで、相続人を短時間で正確に確認できます。

被相続人に認知したお子さんがいた場合など、思いがけない相続人が見つかることもあるため、

専門家による調査はとても重要です。

代襲相続や数次相続など、特殊なケースでは、遺産分割協議書の内容も専門的になります。

司法書士に依頼すれば、適切で確実な遺産分割協議書を作成してもらうことができます。

メリット 具体的な内容
不動産情報の正確な把握 登記漏れを防ぎ、過料のリスクを回避できる
書類収集の代行 戸籍謄本等を代わりに取得してもらえる
相続人調査の正確性 専門家による調査で相続人を漏れなく特定
遺産分割協議書の作成 法的に有効な書類を作成してもらえる
時間と労力の節約 複雑な手続きを一任できる
登記申請の確実性 申請書の不備による却下を防げる

司法書士に依頼するデメリット

司法書士に依頼する場合のデメリットとしては、費用がかかることが挙げられます。

登記費用を抑えたい場合は、司法書士に依頼せず、ご自身で登記申請を行う必要があります。

ただしその場合、必要書類をすべて自分で集め、遺産分割協議書や相続登記申請書も、

調べながら作成しなければなりません。

費用を節約したい場合は、一部の作業をご自身で行うことも可能です。

司法書士に依頼する場合でも、書類収集などを自分で行えば、事務所によっては費用の節約となります。

たとえば戸籍を自分で集めれば、その分の費用を抑えることができます。

ただし、戸籍を取得するには、平日の開庁時間に市区町村役場の窓口へ行く必要があります。

平日の日中に時間が取れない方は、司法書士に依頼した方が、結果的に早く、確実に手続きを進められるでしょう。

弁護士への相談が必要なケース

相続登記の手続き自体は、司法書士の専門分野です。

ただし、相続人同士でトラブルが起きている場合や、今後、法的な紛争に発展する可能性がある場合は、

弁護士への相談が必要になります。

弁護士への相談が必要となる主なケースは、次のとおりです。

ケース 内容
遺産分割協議がまとまらない 相続人間で遺産の分け方について意見が対立し、話し合いが進まない場合。弁護士が代理人として交渉を行うことができます。
遺産分割調停・審判が必要 協議での解決が困難で、家庭裁判所での調停や審判手続きが必要な場合。弁護士に代理人を依頼できます。
遺留分侵害額請求を行う 遺言書により法定相続分を下回る財産しか受け取れない相続人が、遺留分の請求を行う場合。
相続人間で訴訟が必要 相続財産の帰属や相続人の地位について争いがあり、訴訟による解決が必要な場合。
相続放棄の判断 被相続人の負債が多く、相続放棄をすべきか判断に迷う場合。法的なアドバイスを受けられます。
不当な遺産分割協議への対応 一部の相続人から不公平な遺産分割を強要されている場合。

司法書士は登記手続きの専門家ですが、紛争性のある案件については代理人として活動することができません。

そのため、相続人同士で対立がある場合や、話し合いでの解決が難しい場合には、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

まとめ

遺言書がない場合の相続登記では、

・法定相続人の特定
・遺産分割協議
・必要書類の収集

という、3つのステップが重要になります。

なかでも、相続人全員の合意を得た遺産分割協議書の作成が、手続きの要となります。

また、2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記をしないと、過料の対象となる可能性があります。

そのため、できるだけ早めに動くことが大切です。

書類の収集や手続きに不安がある場合は、司法書士への相談を検討しましょう。

相続登記は、戸籍の収集や遺産分割協議書の作成など、思っている以上に手間と時間がかかる手続きです。

「何から始めればいいのか分からない」
「書類がそろっているか不安」
「家族間で話し合いが進まない」

そんなときは、一人で悩まず、まずは専門家にご相談ください。

当事務所では、相続登記の流れや必要書類について、お一人おひとりの状況に合わせて丁寧にご説明しています。

ちょっとしたご質問だけでも大丈夫です。早めに動くことで、余計なトラブルや手戻りを防ぐことができます。

相続のことでお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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