遺言書がある場合・ない場合の相続登記の違い
相続が起きたとき、不動産の名義を変更する手続きを「相続登記」といいます。
実はこの相続登記、遺言書があるか・ないかで、手続きの進み方や大変さが大きく変わることをご存じでしょうか。
「遺言書があれば安心って聞くけど、何がどう違うの?」
「うちは遺言書がないけど、ちゃんと登記できるの?」
はじめて相続に直面した方にとっては、分からないことだらけだと思います。
この記事では、はじめての相続でも分かるように、
遺言書がある場合・ない場合で相続登記がどう違うのか、
どこでつまずきやすいのか、何に注意すればいいのかを
順番にやさしく解説していきます。
読み終わるころには、
「自分の家はどのケースに当てはまるのか」
「今後どう考えておけばいいのか」
が自然と見えてくるはずです。
Contents
遺言書があると、相続登記はどう変わるの?
結論から言うと、遺言書があると相続登記はとても進めやすくなります。
相続登記で一番大切なのは、
「この不動産を、誰の名義にするのか」をはっきりさせることです。
遺言書がある場合は、この点が最初から明確になっています。
たとえば遺言書に
「自宅の土地と建物は長女に相続させる」
と書かれていれば、原則としてその内容どおりに登記を進めます。
他の相続人全員で集まって話し合いをしたり、
「誰が相続するか」を改めて決め直したりする必要はありません。
特に公正証書遺言の場合は、家庭裁判所での確認手続きも不要なため、
必要書類がそろえば、比較的スムーズに相続登記まで進みます。
このように遺言書があると、
・相続人同士の話し合いが不要
・手続きが止まりにくい
・精神的な負担も少ない
という大きなメリットがあります。
相続登記を「早く・確実に」終わらせたい場合、
遺言書の存在はとても心強いものになります。
遺言書がない場合、相続登記は何が大変?
結論から言うと、遺言書がない相続登記は「全員での話し合い」が必要になる点が一番大変です。
遺言書がない場合、不動産を誰が相続するかは法律で自動的に決まるわけではありません。
まず、相続人全員で「遺産分割協議」という話し合いを行い、
「この不動産を誰が相続するのか」
「持分をどう分けるのか」
を決める必要があります。
たとえば、相続人が兄弟姉妹3人いる場合、
全員が内容に納得し、署名と実印を押さなければ、
相続登記は進められません。
1人でも連絡が取れない、話し合いに応じない、意見が合わない
といった状況になると、そこで手続きが止まってしまいます。
ただし、相続人が一人だけ(いわゆる一人っ子)の場合
ただし、相続人が一人だけ、いわゆる一人っ子の場合は例外です。
この場合は、話し合いをする相手がいないため、
遺産分割協議は不要となり、
遺言書がなくても相続登記自体は比較的スムーズに進みます。
もっとも、戸籍の収集や書類の作成は必要になりますので、
「何もしなくていい」というわけではありませんが、
相続人が複数いる場合に比べると、手続きの負担は軽くなります。
法定相続分どおりに分けるという選択
なお、相続人が複数いる場合でも、
「法律で決められた割合(法定相続分)どおりに分ける」
という選択をすることもできます。
この場合でも、相続登記に関して言えば、相続人の1人からでも
可能です。現実的によくあるのは、法定相続分どうりに登記をして
売却後に法定相続分どうりに売却代金を分けるという方法です。
その他の場合は、専門家に相談したほうがいいかもしれません。
結論:相続登記が一番スムーズなのは「遺言書があるケース」
結論として、相続登記がもっともスムーズに進むのは、遺言書があるケースです。
遺言書がある場合、
「誰が不動産を相続するのか」
「どの不動産を引き継ぐのか」
があらかじめ明確になっています。
そのため、相続人全員で改めて内容を話し合う必要がなく、
手続きが途中で止まりにくいという大きな特徴があります。
一方、遺言書がない場合でも、
相続人が一人だけであれば、手続きは比較的スムーズに進めることができます。
しかし、相続人が複数いる場合には、
話し合いや書類の準備に時間がかかることも少なくありません。
その点、遺言書があるケースでは、
相続人同士の関係性や感情に左右されにくく、
必要書類がそろい次第、淡々と手続きを進めることができます。
特に、公正証書遺言であれば、
家庭裁判所での手続きが不要となるため、
時間的・精神的なご負担も大きく軽減されます。
※なお、第三者への遺贈を内容とする場合には、
別途注意が必要となる点もあります。
相続登記を「早く」「確実に」終わらせたいのであれば、
遺言書はとても心強い道しるべになります。
相続が起きてから慌てないためにも、
元気なうちに遺言書を用意しておくことには、大きな意味があるのです。
全員で話し合いが必要になるのはどんなとき?
結論から言うと、遺言書がなく、相続人が複数いて、不動産を特定の人にまとめたい場合には、全員での話し合いが必要になります。
遺言書がない相続では、まず相続人が誰かを確定させたうえで、
不動産をどのように引き継ぐかを考えることになります。
このとき、「誰がこの不動産を相続するのか」「共有にするのか」といった点は、
相続人全員で決めなければなりません。
たとえば、相続人が配偶者と子ども2人いる場合に、
「自宅は配偶者が単独で相続する」
「子どもは代わりに別の財産を相続する」
といった分け方をするには、全員の合意が必要です。
この合意内容をまとめた書面が「遺産分割協議書」です。
一方で、「法定相続分どおりに相続登記をする」という方法もあります。
相続登記に限っていえば、この場合は遺産分割協議を行う必要はなく、
相続人全員の合意や遺産分割協議書も不要です。
戸籍などの必要書類をそろえれば、法定相続分どおりに登記することができます。
この方法では、不動産は相続人それぞれの法定相続分に応じた共有名義になります。
共有名義であっても、
・自分の持分だけを売却する
・持分を贈与する
といったことは、原則として単独で行うことができます。
ただし、不動産そのものを丸ごと売却する場合には、
共有者全員の協力が必要になります。
そのため、将来の活用方法によっては、
最初の相続登記の段階で分け方をよく考えておくことが大切です。
遺言書がない相続では、
「登記をどうするか」だけでなく、
「その不動産を将来どう使うか」まで見据えて判断することが、
結果的にご家族の負担を減らすことにつながります。
相続人が多いと、なぜ登記手続きが止まりやすいの?
結論から言うと、
相続人が多いほど「関わる人の数」が増え、
手続きを一人では進められなくなる場面が多くなるからです。
相続登記は、
書類をそろえて申請すれば終わる手続きのように見えますが、
実際には、相続人全員の協力が前提になる場面が少なくありません。
相続人が増えるほど、
連絡、確認、書類のやり取りが複雑になり、
それぞれの対応を待つ時間も長くなります。
たとえば、相続人が4人いる場合、
戸籍の確認、印鑑証明書の取得、
書類への署名・押印など、
それぞれの協力が必要になります。
このうち、誰か一人でも対応が遅れると、
相続登記全体がそこで止まってしまいます。
また、相続人が遠方に住んでいる、
仕事や家庭の事情で時間が取れない、
体調面に不安があるなど、
事情は人それぞれです。
悪意がなくても「あとで対応しよう」と後回しにされ、
結果として、相続登記が長期間進まないケースも珍しくありません。
さらに、相続人が多くなるほど、
話の前提や理解の度合いにズレが生じやすくなります。
「聞いている内容が違う」
「そういう話だとは思っていなかった」
といった小さなズレが、
後になって大きなストレスにつながることもあります。
このように、相続人が多い相続では、
手続きそのものよりも、
人をまとめること・足並みをそろえることに時間がかかり、
相続登記が止まりやすくなるのです。
話し合いが早い段階でまとまれば、
必ずしも遺言書が必要になるわけではありません。
しかし、将来的に話し合いが長引く可能性がある場合には、
遺言書によって
「誰が、何を相続するのか」をあらかじめ明確にしておくことが、
相続登記を止めにくくする一つの方法になります。
遺言書があっても注意が必要なケースとは?
結論からいえば「遺言書があれば安心」と思われがちですが、
内容や形式によっては、相続登記を進める前に
追加の手続きや確認が必要になることがあります。
代表的なのが自筆証書遺言の場合です。
自筆の遺言書は、原則として家庭裁判所で
「検認」という手続きを受けなければなりません。
検認が終わるまでは、相続登記を進めることができません。
※法務局で保管された自筆証書遺言は検認の手続きは不要です。
また、遺言書の内容があいまいな場合も注意が必要です。
たとえば、
「自宅を長男に相続させる」と書いてあるものの、
不動産の表示が不十分で、
どの不動産を指しているのか分からない場合など、
登記の段階で確認や補足説明が必要になることがあります。
さらに、遺言書が古いケースも要注意です。
相続人の状況が変わっていたりすると、
遺言書どおりに手続きできないこともあります。
このように、遺言書があっても
「内容が明確か」「形式が整っているか」
を確認することが大切です。
安心して相続登記を進めるためには、
遺言書の内容を専門家に一度確認してもらうことも、
有効な選択肢といえるでしょう。
自筆の遺言書と公正証書遺言で違いはあるの?
結論から言うと、相続登記の進めやすさという点では、公正証書遺言のほうが安心です。
遺言書にはいくつか種類がありますが、
一般の方が作成するものとして多いのが
「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。
この2つは、相続登記の場面で大きな違いがあります。
自筆証書遺言は、ご本人が自分で紙に書いて作成する遺言書です。
費用をかけずに作れる反面、相続が発生したあと、
原則として家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要があります。
この検認が終わるまでは、相続登記を進めることができません。
なお、自筆証書遺言であっても、
法務局の自筆証書遺言保管制度を利用している場合には、検認は不要です。
この場合は、相続登記も比較的スムーズに進めることができます。
一方、公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言書です。
法律のルールに沿って作られているため、
相続発生後に検認をする必要はありません。
必要書類がそろえば、速やかに相続登記に進むことができます。
また、公正証書遺言は原本が公証役場に保管されるため、
「遺言書が見つからない」「内容があいまいで使えない」
といったトラブルが起こりにくいのも特徴です。
このように、
自筆証書遺言は手軽に作れる反面、
形式や手続きに注意が必要であり、
相続登記まで見据えるとハードルが高くなることがあります。
相続登記をできるだけスムーズに進めたい場合には、
どの種類の遺言書を選ぶかも、重要なポイントになるのです。
相続登記が義務化されたけど、遺言書の有無で影響は違う?
結論から言うと、相続登記の義務化によって、遺言書がない相続ほど「困りやすく」なりました。
相続登記は、これまでは「やってもやらなくてもよい手続き」でしたが、
法律の改正により、相続が発生したことを知ってから一定期間内に登記をすることが義務になりました。
正当な理由なく登記をしない場合には、過料が科される可能性もあります。
この義務化によって影響を大きく受けるのが、
遺言書がない相続です。
遺言書がない場合は、相続人の確定、分け方の検討、
場合によっては相続人同士の調整など、
登記にたどり着くまでに時間がかかりやすくなります。
一方、遺言書がある場合は、
「誰が不動産を相続するのか」が最初から明確です。
必要書類がそろえば、比較的早い段階で相続登記を申請することができ、
義務化による負担を感じにくいケースが多いといえます。
なお、遺言書がない場合でも、
法定相続分どおりに相続登記をすることで、
いったん義務を果たすという選択肢もあります。
ただし、この方法は「将来の分け方を決めた」わけではないため、
あとから改めて手続きをする可能性がある点には注意が必要です。
相続登記の義務化は、
「いつかやればいい」では通用しなくなった、という意味でもあります。
遺言書の有無によって、登記までの道のりが大きく変わることを、
今のうちに知っておくことが大切です。
結局、うちはどっち?判断の目安と考え方
結論から言うと、「相続人の人数」と「不動産をどうしたいか」で考えるのが分かりやすい判断基準です。
まず、相続人が一人だけの場合です。
いわゆる一人っ子のケースでは、話し合いをする相手がいないため、
遺言書がなくても相続登記そのものは比較的スムーズに進みます。
この場合は、遺言書がなくても大きな支障が出ないことも多いでしょう。
一方、相続人が複数いる場合は注意が必要です。
「法定相続分どおりに登記する」という方法を選べば、
遺産分割協議をしなくても相続登記は可能です。
ただし、その不動産は共有名義となり、
将来の使い方によっては改めて調整が必要になることもあります。
さらに、
・特定の人に不動産を引き継がせたい
・特定の相続人との話合いを避けたい
といった場合には、遺言書があるかどうかで負担が大きく変わります。
遺言書があれば、相続発生後に慌てて話し合いをする必要がなく、
相続登記まで一直線に進める可能性が高くなります。
大切なのは、
「今は問題なさそうか」ではなく、
「将来も困らずに進められるか」という視点です。
家族構成や不動産の状況は、時間とともに変わります。
どの方法が正解かは、ご家庭ごとに異なりますが、
少しでも「あとで大変そうだな」と感じる要素がある場合は、
遺言書を用意しておくことが、結果的に安心につながることが多いのです。
相続登記で困らないために、今できること
相続登記は、遺言書があるか・ないかによって、
手続きの進み方やご家族の負担が大きく変わります。
遺言書がある場合は、
「誰が不動産を相続するのか」が最初から明確なため、
相続人同士で改めて話し合う必要がなく、
相続登記も比較的スムーズに進みます。
一方、遺言書がない場合でも、
法定相続分どおりに相続登記をすることで、
いったん登記を済ませることは可能です。
ただし、不動産を特定の人に引き継ぎたい場合や、
将来の使い方によっては、
相続発生後に調整が必要になることもあります。
相続登記が義務化された今、
「そのうち考えよう」では済まされなくなりました。
相続が起きてから慌てないためには、
元気なうちに、家族構成や不動産の状況を整理し、
必要に応じて遺言書を用意しておくことが大切です。
相続の形はご家庭ごとに違います。
どの方法が合っているか迷ったときは、
早めに専門家へ相談することで、
将来の不安を減らすことにつながります。
「まだ先の話」と思っている今こそが、
実は一番、落ち着いて考えられるタイミングなのかもしれません。
司法書士からのひとこと|相続登記で迷ったら
相続登記は、
「遺言書があるか・ないか」
「相続人が何人いるか」
「不動産をどうしたいか」
によって、進め方が大きく変わります。
ネットで調べていると
「これは自分でできそう」
「でも、この場合はどうなるんだろう?」
と迷われる方も多いのではないでしょうか。
実際の相続では、
ご家庭ごとに事情がまったく違うため、
一般的な情報だけでは判断が難しい場面も少なくありません。
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遺言書があるけれど、この内容で登記できるのか
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法定相続分で登記して問題ないのか
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今は困らないけれど、将来が少し不安
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そもそも何から手をつければいいのか分からない
このような場合は、
早めに専門家へ相談することで、後戻りのない選択がしやすくなります。
当事務所では、
相続登記のご相談をはじめ、
遺言書の内容確認や、今後を見据えたご相談にも対応しております。
「相談するほどでもないかな」と思う段階でも大丈夫です。
気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
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はじめて相続登記に直面している方
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遺言書がある・ないで迷っている方
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